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ルワンダの涙 [Daily Life 2010]

次に見たのはインドとは関係のないルワンダの涙
ルワンダ情勢は実は私の得意分野です・・・。

以前ホテルルワンダで大真面目に感想を書いたので今回も再び。(ネタバレアリ)

この映画は同じルワンダ内戦を描いたものではあるが、原題はShooting Dogs。犠牲者の遺体をついばむ犬を国連兵士が射撃することを皮肉って名づけられている。

ホテルルワンダと決定的に違うのは、撮影場所がホテルルワンダは南アフリカだったことに対し、ルワンダの涙は当時現地にいたBBC報道記者の体験に基づき、実際の悲劇の土地でオールロケされていること。
映画の主役は国際協力隊としてルワンダの首都の公立学校で働くジョーとその公立学校を運営するクリストファー神父。(ともに白人)

1994年4月6日のフツ族出身大統領機襲撃事件を発端に、フツ族がツチ族をナタやこん棒でジェノサイドを始め、学校は逃げてくるツチ族が押し寄せる。この学校は国連が駐在するも、あくまで基地としての機能のため、難民キャンプではない。
国連軍の目的はフツ族を抑圧することでもツチ族を抑圧することでもなく、(名目は)平和維持。だから護衛以外はフツ族やを撃つことも原則許されていない。

ホテルルワンダはホテルに逃げ込んだツチ族が助かるという少しばかりの救いはあったが、こちらはもっと悲惨。実に救いようのない映画になっている。

クリストファー神父もジョーも学校を開放してツチ族も守ると同時に、平和を取り戻そうと奮闘。ジョーは勇敢にも一人で学校の外に出てみるが、見つけた光景はつい数日前まで自分の通訳をしていたフツ族のフランソワがツチを虐殺している光景。

やがて欧米人に撤退勧告が下される。助かるのは白人だけで、いくら配偶者がいようがその配偶者がルワンダ人であれば連れて行かれない。ジョーもクリストファー紳士もここでは残るが、そのうちついに国連軍自体に退去命令が出、欧米人は国連軍含め全員撤退を余儀なくされる。要は国連軍は学校に逃げているツチを見殺しにするというわけ。(フツ族は今か今かとゲートの外で国連軍撤退を待っている)
2500名のツチ族はトラックに群がるが、もちろん一人たりとも乗れない。
そして、最後にはツチ族は国連軍に自分達を殺してほしいとせがむ。軍が拒否すると、軍撤退後フツ族に殺されるよりは銃で撃たれたい、全員がダメなら子供達だけでも・・・と。

そんな光景の中、クリストファー紳士だけは信念の元残り、ジョーは命惜しさにとうとうトラックに乗り込む・・・。
でも果たしてそんなジョーを非難することはできるだろうか?

軍撤退後、クリストファーはトラックにできる限りの子供を乗せ、カバーで隠してまず子供を逃がそうとする。トラックがゲートを出たと同時に、フツ族が国連軍の消えた学校へついに突入・・・。
突入後、学校にいたツチ2500名がどうなったかは言うまでもない・・・。

一方、クリストファーは子供達を逃がそうとする途中、フツ族に尋問に合い、子供を逃がそうとごまかしているうちに殺される。

ホテルルワンダのほうがよほど目を覆うシーンが多く、こちらのほうはエジュケーショナルといったかんじ。でも、ルワンダの涙には本当に希望が何一つ見えない。

この映画は3つのことを(私には)教えてくれる。
  ① 少数且つ武器を持たない者は弱い事実の皮肉さ
  ② 国連平和維持軍の無力さ
  ③ 白人の根底に眠る意識とは・・・

特に③については、非常に考えさせられるキーワードがある。
白人女性BBC記者がジョーに発した一言。
「ボスニア取材時は死体を見るたびに、これが自分の母親だったら・・・と涙した。でもルワンダでは涙が出ない。所詮彼らはアフリカ人」
白人の死体には涙しても、黒人の死体には淡々と振る舞えるということ。肌の色の違いという意識は今もどこかで根底に流れてるんでしょうか。
そんなことはない!とそりゃ思いたいが、現にユーゴ内戦では人道的介入をしたのに、ルワンダは完全に見捨てられた事実は隠せない。
もちろん、国家じゃなく個人レベルではクリストファーやジョーのような白人がいるので、肌の色でどうこう言うつもりはないが、こういう発言が映画の中で出てきたのは事実である。

正直、映画自体のクオリティはいまひとつで、最後は(作品的には)かなりつまらない終わり方だけど、映画じゃなくて、ドキュメンタリーと考えればよい。

また、場所もそうであれば、エキストラやスタッフのルワンダ人も実際にルワンダ内戦を経験した人が多い。そういう数少ない生き残りによってもこの映画は完成したし、エンディング後のその人たちの紹介がもっとも印象に残る映画風ドキュメンタリーといったところ。

たった15年前の出来事であるが、今でも世界のいたるところで内戦問題は有り。
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